相続義務化って何?(相続登記のススメその①)

 今年6月に紫雲出山にて撮影した瀬戸内海をのぞむ紫陽花達
 (本当はこのブログを先月書こうと思い、それ用に写真を撮りに行ったのですが、ブログを書くのが遅れ
 季節外れに…) 

 

 皆さまお盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?ご家族の方が帰省してこられたりして、一家団欒で過ごされたという方も多いのでは?親族の方が集合する場面で相続のことが気になったという方もいらっしゃるかもしれません。今年は相続登記が義務化されたということもあり、事務所への問い合わせや、司法書士の相談会などで相続に関して質問をいただくことがとても多くなっています。 というわけで、この時期気になる相続の話。その基礎知識として、今年の民法改正による相続登記義務化について、どんな内容なのか、どのような人に関係があるのか、実際にどのように対応すればよいのか、簡単にまとめてみたいと思います。

 

いまさら聞けない相続登記義務化って何?


何が義務化されるの? 

 不動産を相続した場合に必要となる相続の登記が義務化されました。 
自分が不動産を相続したことを知ってから3年以内に、その不動産を管轄する法務 局へ相続による所有権移転登記申請を行う必要があります。 
※遺産分割協議が整わない場合などは新設された相続人申告の登記を申請することでも義務を果たせます。この登記には不動産登記における自分の権利を守る効力はありません。

 

何故義務化されたの? 

 不動産の権利登記は自身の権利を守るための役割が主でしたので、これまで義務で はありませんでした。しかし、長い間相続登記がなされずに放置されていると所有者の行方が分からなくなったり、所有者が亡くなってその相続人が誰か分からないというような状態になっている土地、いわゆる『所有者不明土地』となってしまいます。
 このような『所有者不明土地』が今では合計すると九州の面積に匹敵するほどになると言われています。『所有者不明土地』のまま放置されると、土地の有効活用ができなかったり、公共工事を行う際に障害となってしまったりと、様々な問題が起きてしまいます。そのような事態を避けるため『所有者不明土地』の発生を予防するための手立ての一環として今回、相続登記の義務化がなされました。

 


義務に違反するとどうなるの? 

 法務局から相続人に対して通知がなされます。そしてこの通知を受けて速やかに相続登記を行うか、相続登記を行うのが困難な場合にはその理由について弁明する必要があり、この義務が果たされなかった場合には10万円以下の過料が課される可能性があります。
このように、いきなり問答無用で過料が課される訳ではありませんが、それでも期 限内に相続登記を行うのはとても大事だと言えます。

 


早目に相続登記をするべきなのはどうして? 

 ① 過料を払っても相続登記をする義務がなくなる訳ではない 
 相続登記を期限内に行わなかったことによる過料はあくまでも、相続登記を促すためのものであり、それを支払ったからと言って、相続登記の代わりになるものではありません。つまり、過料を支払ったとしても、相続登記義務に違反した状態はそのままです。今回の義務化されたばかりですので、実際の運用がどうなるのかはまだ分かりませんが、条文上は登記義務が果たされない限り何度でも繰り返し過料が課される可 能性があります。 
また、将来相続した不動産を売買などで処分する際には当然相続登記が必要になります。その時までに過料を支払っていたとしても、登録免許税が安くなったりはしません。つまり、相続登記は避けられないもので、過料を支払っても何も得はありません。 

 ② 相続は時間が経つほど大変になる 
 相続登記をするには基本的に相続人の全員で遺産分割協議を行う必要がありますが、長く相続登記を怠っていて、相続人の誰かが亡くなったりするとその方の相続人も協議に参加しなくてはならなくなります。協議をする人数が必然的に増えていきますし、次第に関係が疎遠で、殆ど会ったことのない相続人が現れてきたりします。また遠方に住んでいたり、海外在住の相続人がいたりと、協議をまとめるのが困難になるケースはとても多くあります。もちろんそのような困難ケースでも司法書士のような相続の専門家にご依頼いただけ れば解決は可能だとは思いますが費用も時間も多く掛かってしまいます。なるべく早く相続登記をすることがお金も時間も掛けずに相続を終わらせる上では欠かせません。

 


 早めの相続手続きを行うことがが肝要だということをご理解頂けたでしょうか?
 そうは言っても、多くの方にとって相続というのは人生の中でそう何度も経験するものではありません。相続登記をしなくてはいけないと分かってはいてもどんな書類を集めてどうやって申請書を作ったら良いのか分からないという方が殆どだと思います。

 相続手続きについて不安を感じるという方は是非お近くの司法書士にお尋ねください。

2024年08月18日