
先日梅の花を見に行きました。
例年より開花が遅れているようで殆ど蕾でしたが、中にはきれいに咲いている花もちらほら。なにより、一面に梅の花の良い香りが漂っていて、春はすぐそこまで来ているなと感じました。
早期の相続登記を促すために、相続登記の義務化がなされたのは記憶に新しいかと思いますが、相続登記の促進策は義務化以外にも用意されています。その一つが、相続登記の際の登録免許税の免除や減免の規定です。
登録免許税とは?
不動産登記を申請する際に法務局に納付する税金です。登記の内容により金額が異なります。不動産の相続登記は通常、固定資産税評価額の1000分の4(0.4%)です。
他の税金と同様に、様々な特例が設けられており、相続登記の際に適用できる減免の規定としては租税特別措置法84条の2の3第1項と第2項があります。
租税特別措置法84条の2の3第1項とは?
死亡した相続人が相続した持分についての登録免許税を免除する規定です。
不動産の登記名義人が亡くなり、その相続登記がなされないうちに、相続人の方が亡くなりさらに次の代の相続が発生したという場合です。
この様な数次相続の場合、条件を満たせば、最終の相続人に直接相続させる登記をすることができますが、原則的には一代づつ相続登記をしていく形になります。その時に、同じ不動産について何度も登録免許税を払わないといけなければ、割高感を感じ、相続登記をためらってしまいかねません。そこで、中間の相続人に関する相続登記にかかる登録免許税が免除されます。
例:祖父名義の不動産(評価額「120万円」)を親が相続し、その後本人が相続した場合
本来:120万円×1000分の4が2回で9600円
特例:1回分で済むので4800円(祖父⇒父は免除)
租税特別措置法84条の2の3第2項とは?
より多くのケースで利用できるのがこの特例です。
相続した土地の固定資産税評価額が100万円以下の場合、その土地についての相続登記に関しては登録免許税がかかりません。
この100万円以下かどうかは土地1筆ごと(1地番ごと)に判断されます。例えば80万円の土地と120万円の土地を相続した場合、80万円の方は登録免許税がかからず、120万円の土地についてだけ登録免許税が必要です。
また、相続したのが共有持分の場合、その持分割合で判定します。例えば120万円の土地について被相続人の持分が2分の1だった場合、120万÷2=60万なので適用されます。
併用はできるの?
そして、気になるのはこの2つの減免措置は併用できるのかという点ですが、結論からいうと、併用はできません。
私が経験したケースでは、父親名義の土地の相続で、相続人は母親と息子さん一人。そして、相続登記が未了のうちに母親が亡くなったという事例です。
以前はこのようなケースでは、いわゆる一人分割協議(息子さんが父親の相続人としての立場と、相続人兼被相続人となる母親の相続人としての立場に分けて考えて、一人で分割協議を成立させる)の方法によって、直接息子さんに相続登記できていましたが、最近の判例によりこの方法は否定され、一旦母親と息子さん名義に相続登記をし(法定相続分通りに2分の1づつ)、その後、母親が相続した持分について息子さんへ相続登記をするという流れで手続きする必要があります。
この場合、土地の評価額が仮に120万円だったとすると。第1段階の登記(父親⇒亡母親・息子への登記)の際、亡母親名義の持分2分の1については第1項の規定が適用され非課税になります。すると、この土地について課税されるのは息子さんの相続分となる持分2分の1についてなので、60万円ということになり、100万円以下の土地として第2項が適用出来るのでしょうか?
色々と調べた結果、法務省から各法務局へ事務連絡として、第1項と第2項の合わせ技はできない(第1項による免除は不動産の価額の判定には影響しない)旨が通達されていました。全国の法務局で同様の取り扱いになっているものと思われます。
結論:第1段階・亡母親の持分については免除(第1項)なので120万×2分の1×0.4%
第2段階・亡母親の持分(120万円×2分の1)が100万円以下なので免除(第2項)
注意点とは?
今回ご紹介した減免措置は現状令和7年3月31日までですが、令和9年3月31日まで延長される見込みです。これまで幾度も延長されてきており、相続登記を促す必要性は今後も変わりませんので、当面の間は延長され続けるのではないかとは思いますが、いつ廃止になるとも限りませんので、早めに手続きをすることがお薦めです。
また、租税特別措置法84条の2の3第1項・第2項の他にも、登記の際の登録免許税には色々と減免・免除の規定が設けられています。しかし、要注意なのは、申請者が登記申請の際に減免・免除を受ける旨を申請しないと、減免・免除を受けられません。
司法書士にご依頼いただければ、減免規定の適用を始め、登記費用が最もお安くなるようご案内いたしますので、登記手続きの事で分からないな、不安だなということがありましたら、お気軽にお問い合わせください。