最近万年筆にはまっています。この万年筆はインクの色が眺められるので特にお気に入りです。このインクの色は
『空色』入道雲の浮かぶ夏の空を思わせる爽やかな色です。
相続の問題で相談を受けていて強く感じることそれは、殆どの方にとって相続は初めてのこと、ということです。なので、初めての事で戸惑ったり、不安になったりしてしまうのは仕方ありません。
相続人の方が抱える悩みの中でも特に解決するのが難しいのが
『どのように遺産を分ければいいのだろう?』
『そもそも、親(被相続人)は、どのように遺産を分けることを望んでいたのだろう?』という悩みです。
相続人の方がこのような悩みを抱えることを防ぎ、ご自身が望む形で遺産を次世代に承継していくためには、事前に対策をする必要があります。そしてその際に欠かせないのが遺言と生前贈与です。
遺言とは?
遺言者(遺言書を書く人)の遺産を誰に受け継がせるかを予め自分で決めておくことが出来ます。また、死後認知など一定の身分行為もできます。
遺言の内容(遺産をどのように分けるか)は遺言者の自由(※一定の書式要件を満たす必要はあります)ですが、遺留分などに注意が必要です。ここの配慮を欠かしてしまうと、遺言者の意思通りの相続が実現できなかったり、相続人の間で諍いの素になってしまったりする可能性があります。
生前贈与とは?
ご自分が元気なうちに財産を相続人などに贈与することです。
生前贈与で受け取った財産は基本的に相続財産にはならないので先ほど遺言の注意点で挙げた遺留分を侵害せずにすむ可能性があります。遺産を相続人の誰かに偏って承継させたい場合にはこの生前贈与が特に重要です。
生前贈与の注意点:生前贈与はお早めに
生前贈与は前述のとおり遺留分対策に効果的ですが、相続人に対する相続開始10年以内に行われた贈与は遺留分を計算する際に相続財産に含まれてしまいます。
また、相続税の計算上も同様に相続開始以前3年間(令和9年から段階的に期間がのび最終的に7年間になります)の贈与は相続財産に含まれてしまいます。
つまり、生前贈与を活用するためには、長期的な計画を立てて、時間をかけて財産を移していく必要があります。
生前贈与のやり方
生前贈与は贈与ですので当然贈与税のことを考慮に入れる必要があります。
基本的な点として暦年贈与と言われる贈与税の非課税枠があり、年間に贈与を受けた金額が110万円以内であれば贈与税はかかりません。ですので、この非課税枠を最大限活用できるよう年数をかけて少しずつ贈与するのが原則になります。(毎年同じ時期に同じ額が贈与されていたりすると定期贈与として一括で課税される可能性があるのでご注意ください) そして贈与税が非課税となる制度として、相続時精算課税があります。
相続時精算課税とは?
その名の通り、生前贈与を受けた際に贈与税の猶予を受けて相続時に精算する制度です。この制度を利用して受けた贈与は相続時に相続財産に含まれるため、基本的には相続税対策にはなりません。しかし、一般的に相続税の方が贈与税より税率が低いですし、そもそも相続税がかからない場合には特に有効です。
そして、この相続時精算課税は限度額が2500万円までなので、暦年課税を利用する場合よりも、まとまった財産を贈与するのに向いています。
この制度の注意点として、相続時精算課税を選択した場合、その贈与者からの贈与は暦年贈与を適用できなくなるという点があります。しかし、改正がなされ、令和6年1月1日以降に受けた贈与については年110万円の基礎控除が受けられることになりました。つまり相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与であっても、暦年課税と同様の贈与税の免除を受けられる事になったのです。更に、この基礎控除は暦年課税とは別個の制度のため、両方の免除を受けることも可能です。例えば父親から相続時精算課税を利用して2500万円分の贈与を受けている場合で、次の年に父親から110万円までの贈与を受け、同じ年に母親から110万円までの贈与を受けた場合、父親からの贈与は相続時精算課税の基礎控除で、母親からの贈与は暦年課税で、どちらも贈与税がかからず贈与を受けることができるようになったのです。
活用方法
ここまでご説明したように、相続時精算課税が使い勝手良くなっていますので、暦年課税と組み合わせて、長期スパンで財産を次世代に移していくというのがおすすめです。
特に、生前贈与が相続財産に含まれる期間が相続開始前の7年間に伸びていきますので、より早くに承継をする必要性が増していると言えます
生前贈与を活用するイメージとしては不動産などの分けにくく、高額になりがち財産を相続時精算課税を活用して贈与し、将来の相続税支払いのための資金や、あるいは遺留分侵害の主張がなされた場合に備えた資金として毎年現金を贈与していくというのがベストシナリオではないでしょうか?そして、ご自分が住む家など、すべての財産を生前に承継させるのはあまり現実的ではありませんので、生前に贈与できない財産の分け方については遺言に書き残しておくなど、いくつかの手段を組み合わせていくことになります。
むすびに
相続というのは、滅多に経験はしないとしても、誰もがいつかは直面する課題です。
“その時”に少しでもお子さんたちが悩んだり途方に暮れてしまったりしないよう、お元気なうちできる対策を考え見られてはいかがでしょうか?その際は是非、税理士や司法書士といった相続の専門家にご相談ください。